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官能小説家、深志美由紀ブログ

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「きもの」

さて先日の幸田文さんの「きもの」という小説についての日記の続きです。



「きもの」は明治大正昭和にまたがって一人の「女性」がきものを通して生活をおくり、成長してゆく姿が描かれた小説です。


この、いわゆる「きもの」が普段着であったころの上や知識がもう着物好きには堪らない作品なのですが、それだけでなく、古きよきエコの心や、細やかな心遣いなんかが勉強できて実にすてきな本なのです。




その中でも私が一番勉強になったのが、「贈り物」についての記述でした。


主人公の「るつ子」が、貧しい家の友人に必要な袴を使い古しの布で拵えて贈ろうというシーンがあって、そこで母と祖母に強く反対されるのです。

「意地わるよ、そんなの。和子さんとこ、貧乏で苦労してるんだから、あげれば助かるのよ。」

それに対して祖母がこたえるのは、「去年だかこしらえた、まだ新しい自分のセルがあるじゃないか。あれをあげたらどうだろう」

「だって、あんな新しいの、もったいないわ」

「もったいない――誰にもったいないの?何にもったいないの?」


その後るつ子が大人になって震災で焼け出されたところへ、お嫁に行った姉がお見舞いに、家族の着古した衣服を渡すシーンがあります。

そこでるつ子は怒って、「どうしてお父さんに古いものなどくれるの。浴衣がなければ、手拭いでいいじゃないの。清々しくてこそ、父へあげるべきもの、親への贈り物になるんだわ――」




ははー、なるほどな!と思いましたね。


どうでしょうこの、施す側と、施される側のこころの機微。



これ以来、私は、ひとさまに差し上げるものはよほどの事情がない限り新品で、と心がけるようになりました。


まあ、自分は着物とかは古いのいただいてもうれしいんですけどね!

着物関係のものって、今は作られていないものとか結構あるので、どうしてもアンティークのやり取りになっちゃうし。



そんなわけで「人にものを贈る」ということをよくよく考えさせられたワンシーンでございました。


人に何かあげるのって、とっても楽しいことですよね。

それが迷惑の押し付けにならないように気をつけたいものです。



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