幸運。
実を言うと、わたしは、小説に関してだけはとても幸運に恵まれた人間なのです。
クジ運、ギャンブル運、ついでに言うと男運なんかは軒並みツイていないほうで、くじ引きやビンゴなんかは生まれてこのかたロクに当たったことはないし、じゃんけんだって弱いし、まあかけっこも遅いし、とにかく勝負ごとには何一つとして恵まれていないほうなんですが。
小説に関してだけは、なんか分からないけど、すごくツイている。
そもそも、2001年に集英社ノベル大賞の佳作に選ばれるまで、私は、一本の小説も書いたことがありませんでした。
いや、遡ると、中学生の時文芸部に所属していたので、その部誌に一本二本くらいは、作文を載せたことがあったんですが。まあ、お遊びです。
このブログを読んでもらったら分かると思うけど、大体にして、作文も苦手なのだ。なんも勉強してないし。
文芸部とゆったって活動のメインはお絵かき。私は子供の頃から漫画家になりたかったのです。
小学生、中学生と、ひたすら時間があれば漫画を描いている子供でありました。
で、二十歳になって水商売をしながら、私はこのままではいけないわ、なんとかしなくちゃ、と思って、漫画の投稿を始めたんですね。
だって学歴もないしさー。ふつーに地元の高校をなんとか出ただけで、勉強も苦手だし。
店を持つほど接客が好きなわけでもないし、高卒で何年も水商売をやったあと、いまさらきちんと就職できるわけもなし。
せいぜい希望のある将来とゆったら円満に結婚するくらいのものですが、なんか、それも違う気がするというか。やはりできるなら、自分自身がなにものかになって、何かを残す仕事がしたかった。
で、それまで同人誌もちらほら出したこともあったし、憧れの漫画家になるべく持ち込みを始めたわけですが……
これが、才能がないんだわ(笑)。
私はずっとオタクな世界にいたので、二次創作で漫画を描いている人を随分見てきたし、中にはプロになった子もいた。で、しみじみ比べてみると、明らかに、明らかに私には漫画の才能がない。
なんというか、立ち絵を描くのは好きなんだけど、立体的に空間を捉えたり、ワクの中でカメラワークを考えたり、コマ割で世界を構築する才能がまったくないことに気付いてしまったんですよねー。
で、何回か持込してみて、やっぱりこれはだめかもしれないと思った。
当時持ち込んだのは、太田出版、竹書房、集英社とかだったかなー。集英社は雑誌ごとにコンテスト的なものがあって親切にクラス分けをしてくれていたので、なんか、Aクラスかなんかで五千円くらい賞金貰った気がしますが。それがせいぜいだったんですよね。
持ち込みしたお陰で自分の弱点がはっきり目に見えて、直すところはたくさんあるけど、その努力をできるだろうかと、それで形になるだろうかと想像したら、ちょっと無理かもしれないと思った。
才能というのは勉強でカバーできるものなんですが、それを努力して身に着ける根気もないなと思ったの(その、ある物事に対して訓練や勉強する努力が苦であるか否かがずばり才能なのだとおもう)。
ちなみに、よく言われることですが、漫画でプロになりたかったらただ送付して投稿するのではなく絶対に持ち込みをしないとだめだと思います。
持ち込みをするとダメだしをされるので怖いですが、その、ダメなところを聞かないと意味がないわけなんで(最初から自信のある人はここで挫折する)、いまプロを目指している人はぜひとも持ち込みしていただきたい。
(いまは待ってるだけで拾ってもらえるみたいな同人誌世界の弊害があるっちゅーかなんちゅーか、まあ、この話はおいといて……)
でもやっぱ漫画しかやってこなかったので、なんとか、4コマあたりに食い込めないかと(笑)、頑張ってみようと思っていたんですが、その矢先、突然、母がどこからかワープロを貰ってきたんですよ。
当時まだちょっと高価だったので、自分ではとても買えない品だったのですが(パソコンじゃないよ!ワープロだよ)。
おおこれがワープロさまかー、と思って、では漫画ならダメだけど、小説だったらどうだろうかと。
そのとき思ったのが、例えば、絵で「美しい花」を表現しようと思ったら美しい花を描く技術が必要だけれど、それが文章なら「美しい花」の一言で済むなって思ったんですよね。これは、訓練がいらないのではないかと。
でも小説とか読むのは好きだけどほとんど書いたこともないし、ぶっちゃけて言うと文章を考えるという行為自体が全然まったく好きじゃないというか、興奮しないと言うか(絵を書いてるときは寝食を忘れます・・)、とにかくキツい。
ので、ぜんぜん進まないのですが、なんとか毎日ちょっとずつ書き溜めて、ギリギリ応募規定枚数を書き上げ、投稿してみたのが、コバルト文庫のノベル大賞だったわけなのです。
と、前置きが長くなりました(前置きだったの)。
で、出したらさー、これがなんと、佳作を取ったというではないですか!!
当時の選考委員は井沢元彦さん、大岡玲さん、田中雅美さん、槙村さとるさん、眉村卓さん。応募総数は1609編。
「えっ、まじっすか」ってなもんですよ。
初投稿で佳作って、相当なラッキーです。もちろん実力も多少はあったと思いますが、なんというか、絶対幸運がなかったらいかなかったと思う。
ちなみに具体的に言うと、初読み?の方との相性とか、あと、テーマの選び方とか、そういうラッキーがあったと思うんですが。まあ、テーマは狙ったわけなんですけれども、ども、ども。
なんじゃそらーーーですよ!
ほんとこれちょっと自慢なんですけど。初投稿どころか初めて書いた小説でデビューしちゃったわっていう……。
でもそうなると、当然、あとあとの実力が追いつかないわけで……
何本か短編を雑誌に載せていただいたあと、順調に挫折いたしまして、とうとう本も出ないまま賞金だけ貰い逃げして立ち消えてしまいました。
だって書けないんだもの。もう、どうしようもなく書けないんだもの。特に長編が書けない。物語の流れを把握するのが、原稿用紙100枚くらいまでで限界なんですよ。文庫一冊ぶんなんてとてもとても……。
で、挫折して結婚しちゃった。
できるなら小説でやっていきたいなって気持ちはあったけど、なにしろ生活に困ってなかったもんだから辛いことがしたくない。小説書くのは自分の内面に真面目に向き合うことで苦しくて辛かったので、ぬくぬくぬるま湯につかっていたらそんなことができなくなってしまいました。
んでまあ途中約10年、色々あってですね、離婚したり、もう一回結婚したり、浮気されたりして……
もうこれは私は、一人で生きていくしかないんじゃないかしらと思うに至りまして。自分の食い扶持は一生自分でかせがにゃならんわこら、と。
まあいつか投稿しよう~とのんびりオリジナル書いたり、同人誌書いたりはしていたんですが、きちんとしよう、もう一度デビュー目指して本格的に頑張ろう、それしかないし。つーか振り返ってみたらいままで小説しか形になったものとかないし。みたいな。
というところで知ったのが去年、無双舎さんの団鬼六賞で、その時点で、締め切りまで2週間。
ちょうどSMをテーマに(!)書き始めていた小説が50枚くらいあって、これは2週間だけ死ぬ気で頑張ろうと思って、なんとかかんとかのこり150枚(生まれて初めて100枚以上の小説書いた)、ギリギリ応募規定枚数を書き上げて応募させていただいたわけです。
(ちなみに、それまでの数年に二、三回投稿してはいたんだけど、全てコバルト時代のボツ原稿の焼き直しだった)
で、出したらさー。これがなんと、優秀作をとったというではないですか!!!???
なんなの。なんなのこのラッキー。いみがわからないよ。むしろこわいよ。
いや、自慢に聞こえますよね?ぶっちゃけ自慢です。自慢しますよそら。超絶幸運だもん。
この、団鬼六賞にたどり着くまでのご縁とか幸運がまたあって……いやあ、信じられない。未だに信じられません。宝くじでいっせんまんえんくらいあたったようなラッキーです。
すげえなー。
そんなわけで、ちょっと長くなっちゃいましたが、どうやら私は、小説に関してだけはほんとうにラッキーな星のもとに生まれているようです。
これは、書くのが辛いとか言っている場合じゃありません。
もうこれ、腹を据えてやるしかないんじゃないかな。他にできることなにひとつないし。ぶっちゃけ人様に自慢できることってこれしかないもの。
小説書くのは辛いけど、逆に言うと、こんだけ辛いことが報われるというのは、なんか、意味のあることなのかもしれないわ。
もちろんいままでがただ偶然の幸運で、こっからがくっと落ちる可能性もあるんですけど(笑)、いや、一回挫折しておりますので、次はほんとにラッキーだけじゃなくて実力で生き残れるように頑張りたいと思います。
このネタ、書きたいなーと思ってたんだけど読んでて面白いふうに書ける自信がぜんぜんなく(いやな感じでしょ)、多分いまも書けていないのだが、まあいいや、記録と言うことで。
なんつーの?あれ?あたしって、もしかして、小説書くために生まれてきちゃったりしたんじゃ、ないかしら。
(図に乗りすぎです)
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