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官能小説家、深志美由紀ブログ

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甘えと自立の、ジレンマ

私の小説のテーマのひとつは、「父性」だとおもう。



私は若い頃から結構ファザコン気味というか、年上で、自分の知らない知識の豊富な男の人が好きだった。

これはなんでかというともう絵に描いたように分かりやすく、私が、実の父を知らないからだと思うのですよね。


うちの母は私が5歳くらいの時に再婚して、まあ新しい父は幸い酒も飲まず働き者のたいへんよい人だったので「父親」というと今の父でまったく違和感がないのですが

「実の父親」と母は私が赤ん坊の頃に離婚してしまったので、顔もしらないんだな、これが。

名前だけは、結婚したり離婚したりしたときに届けに記入するんでちょっと見たけど、よく覚えてない。

写真もない。

離婚する時の母の方針で、父には私は会わせないってことに決めたらしいんだな。


で、とうとう一度も会わぬまま、彼は私が高校生くらいのときに亡くなってしまったらしい。

ちょっとだけ、遺産相続の手続きやらなんやらがあったのだ。



これに関して私は特に、悲しいとか、そういう感情は湧かないのだけど(だって結局知らない人だからね)、まあ、

最後まで私は父を知ることがなかったとだと思うと少し寂しい。

ある程度自我が固まってからできた育ての父には、まったく遠慮なく接することができたかと言うと正直ちょっと自信がないし、それはもちろん父のほうも同様で、特に私は根暗で理屈っぽいオタクっ子だったので、ちょっと扱いづらい部分があったと思う。

(重ねて言うけれども、育ての父は基本的に子供好きで面倒見のよい、そして時に厳しいちゃんとした人で、べつに悪いところはないのよ)


そんなわけで、どうも、私の中には「父性」に対する憧憬のようなものがあるんである。


世の中の多くの「女の子」が父親にどれだけ無条件で愛されているかを知るにつけ、やっぱりちょっと、羨ましいな、と思う部分があることは否めない(母と育ての父は連れ子同士の再婚で、実子である姉に対する父を見てもどうしても自覚せざるを得ない部分でもある。もちろん、母と私の関係を、姉もそのように見ていたと思うので不公平だとも思わないけれど。ちなみに私は姉が家族で一番好きだ)。

もちろん、いろいろな事情でそうでない人も沢山いると思うので絶対にそうあるべきだと言いたいわけではないし、自分が特に不遇だとかそういうことではないんだけども。




この自分の中の「父性の不在」を、わたしはどうやら、男で埋めようというきらいがある。

20歳くらいの頃は、一回り以上年上の男性と付き合ってばかりいた。

尊敬できる年上の男性に、かわいいねかわいいねと愛でられて甘やかされることを求めていた。

これはあんまりよくないことなんだけどねー(しかもそんで、セックスにすぐ嫌悪感が出るの。これってほんと顕著に投影だと思う)。

気がついたら、どうも、そんなかんじになってしまったんだな。

そして、その自覚があるからこそ、今は恋人(夫)に無条件で絶対の愛情を求めることはいけないことなのだ、と思っていたりもする。

父親の代わりをさせてはいけないものね。

男は私を、決して無償には愛さない。


そうして今、私は結局、男で埋められない欲求を作品へぶつけようとしている……の、かもしれない。どうやらそんなようだと、思う。

私の小説に出てくる女たちは、みんな、父性に飢えている。



正直言うと自分の中の父性への渇望を自覚する時、いまだにどうしても涙が出てしまう。

もう三十路も過ぎたこの年齢になってまだ、である。

自分が急激に小さな子供のように感じられて、まるで与えられない欲求に拗ねているような自虐的で恥ずかしいきもちになる。

この期に及んで、守られる存在でありたいなどと甘えたことを考えているのかもしれない。

子供でもできたら変わるのかしら、と思ったりもするけれど、もちろん子供はそんなことのために産むものではないし、そんなことを押し付けてもいかんのだ。



自分自身の中に父性(それはゆきすぎた母性みたいなものなんだけど)を飼い込もうと私は必死になっていて、強迫的に自立したいという強い欲求はここから来るのかもしれない。




うん、オチがなくてすみません(笑)。

これでも、結構な女性が自分でも気付いていないうちに抱え込んでいるんじゃないかなあと思うんだよね。

もちろん、実の父親がいても、父性に飢えている子はたくさんいる。


私は父性から解放され、自分の足で立ちたい。その手段を探し続けているのです。




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